通常損耗とはどこまで?入居者が負担しなくてもよい可能性がある傷・汚れを具体例で解説

通常損耗とはどこまで?入居者が負担しなくてもよい可能性がある傷・汚れを具体例で解説



賃貸住宅を退去するとき、

「この床の跡は請求される?」

「壁紙が少し変色しているけれど大丈夫?」

「長く住んでいたのだから、多少汚れているのは仕方ないのでは?」

と気になる方は多いでしょう。

退去時の費用を考えるうえで、ぜひ知っておきたい言葉が「通常損耗」です。

通常損耗とは、簡単にいえば、一般的な生活をしていて自然に生じる傷みや使用感のことです。

賃貸住宅は、誰かが生活すれば少しずつ状態が変化します。入居した日の状態を何年後も完全に維持することは現実的ではありません。

そのため、部屋に傷や汚れがあるからといって、すべてが入居者負担になるわけではありません。

今回は、どのようなものが通常損耗として考えられるのか、身近な例を使って見ていきましょう。

家具を置いてできた床のへこみ


ベッド、タンス、冷蔵庫、食器棚など、大型の家具や家電を長期間置いていると、床に跡が付くことがあります。

退去時に家具を移動して初めて、

「こんなに跡が付いていたんだ」

と気付くことも珍しくありません。

しかし、住宅で生活する以上、家具や家電を設置することは通常想定される使い方です。

そのため、一般的な家具の設置によって生じた床のへこみなどは、通常損耗として考えられる代表的な例です。

ただし、家具を引きずって大きな傷を付けてしまった場合などは事情が異なります。

「家具を置いていた跡」と「家具を動かして付けた傷」は、同じ床の損傷でも原因が違うということです。

日光による壁紙や床の変色


窓から入る日差しによって、壁紙やフローリングの色が少しずつ変わることがあります。

家具を移動すると、

「家具が置いてあったところだけ色が違う」

という状態になっていることもあります。

これも普通に生活していて完全に防ぐことは難しいものです。

日光による自然な変色は、時間の経過によって生じる「経年変化」として考えられます。

退去時に色が違っているからといって、それだけで入居者が張替え費用を負担するというものではありません。

テレビや冷蔵庫の後ろの黒ずみ


テレビや冷蔵庫を長期間置いていると、壁紙がうっすら黒くなっていることがあります。

これは電化製品周辺の空気の流れなどによってホコリが壁へ付着することで起こる場合があります。

通常の使用によって生じた程度のものであれば、通常損耗として考えられることがあります。

ただし、著しく汚れていたり、別の原因による汚れだったりすれば判断が変わることもあります。

重要なのは、見た目だけではなく「なぜその状態になったのか」という点です。

画びょうの小さな穴


カレンダーやポスターを壁へ飾るために画びょうを使用することがあります。

一般的な画びょうによる小さな穴については、通常の生活の範囲として扱われる場合があります。

一方で、重量物を取り付けるために大きなネジやアンカーを使用し、下地まで大きな穴を開けた場合には同じようには考えられないことがあります。

「壁に穴がある」という結果だけではなく、穴の大きさや使用方法なども確認する必要があります。

エアコン設置による跡


生活するために必要な設備を設置したことで、壁に跡が残る場合があります。

適切な方法で設置されたエアコンなどについては、通常の生活で必要となる設備として考えられることがあります。

ただし、建物へ無断で大きな加工をした場合などは別の問題になる可能性があります。

設備を取り付ける場合には、事前に管理会社へ確認しておくと安心です。

畳の日焼け


和室では、畳の日焼けもよく見られます。

窓に近い部分だけ色が変わったり、家具を置いていた部分との色の差が出たりすることがあります。

これも時間の経過や日光によって自然に起こる変化です。

普通に生活していて生じた日焼けまで、すべて入居者の責任と考えるわけではありません。

では、入居者負担になる可能性があるものは?


通常損耗と比較すると分かりやすくなります。

例えば、

家具を置いて床がへこんだ
→ 通常の使用によるものとして考えられる場合がある。


家具を引きずって床に深い傷を付けた
→ 入居者側の負担が検討される場合がある。


壁紙が日光で変色した
→ 経年変化として考えられる。


飲み物を壁へこぼし、そのまま放置して大きなシミになった
→ 入居者側の負担が検討される場合がある。


このように、同じ「床」「壁紙」の損傷でも、原因によって考え方が変わります。

「汚れている=入居者負担」ではない


退去立会いでは室内のさまざまな部分を確認します。

そこで傷や汚れを指摘されると、

「全部自分が払わなければならないのでは?」

と心配になる方もいるでしょう。

しかし、傷や汚れがあることと、その修繕費を誰が負担するのかは別の話です。

まず状態を確認し、その原因や使用期間、契約内容などを踏まえて判断することが大切です。

逆に、入居者側も「長く住んだから何でも通常損耗になる」と考えるのは適切ではありません。

お互いに状態を確認することが重要です。

入居時の写真が役立つことも


入居した時点ですでに傷や汚れがあった場合、退去時になってから「いつ付いた傷なのか」が分からなくなることがあります。

そのため、入居時に気になる箇所があれば写真を残しておくと安心です。

最近ではスマートフォンで簡単に撮影できます。

壁、床、建具、水回りなど、気になる部分だけでも記録しておけば、数年後の退去時に確認材料として役立つことがあります。

通常損耗を知ることは双方にとって大切


通常損耗という考え方は、入居者だけを守るためのものではありません。

管理会社や貸主側にとっても、適切な退去精算を行うために重要な考え方です。

入居者が負担するべきものは適切に負担し、通常の生活や時間の経過によって生じたものについては適切に区別する。

その積み重ねが、退去時のトラブルを減らすことにつながります。

まとめ


賃貸住宅では、生活しているだけでも少しずつ傷みや使用感が生じます。

家具による床のへこみ、日光による壁紙の変色、畳の日焼けなど、通常の生活や時間の経過によって生じる変化は「通常損耗」や「経年変化」として考えられることがあります。

一方で、不注意などによって生じた傷や汚れについては、入居者側の負担が検討される場合があります。

大切なのは、「傷があるから誰かが払う」と単純に判断するのではなく、その傷がなぜできたのかを確認することです。

退去立会いや敷金精算でも、この基本を知っておくことで、双方が納得できる話し合いにつながりやすくなるでしょう。

おすすめ:通常損耗の考え方をもう少し詳しく知りたい方は、前回の「原状回復のガイドラインとは?退去費用を考えるうえで知っておきたい基本」もあわせてご覧ください。

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2026/08/07 18:20 | 固定リンク | 原状回復コラム